ディジタルメディア学科、情報科学研究科

西島 利尚 教授 (Toshihisa NISHIJIMA)

  • 工学博士

主な研究領域

  • 符号理論
  • 情報理論

自己紹介

 私の研究生活は,修士課程の入学と同時にスタートしました.研究のテーマは一貫して,情報理論と符号理論の狭間に存在するいくつかの未解決問題の解決を目標(夢)に,その解決の糸口を探る研究に徹しています.学位論文は,「代数的誤り訂正符号の構成とその漸近的能力に関する研究」というもので,情報理論の極めて重要な結果であるShannonの通信路符号化定理を具体的に満足する限られたクラスの代数的誤り訂正符号の能力の改善に関する研究です.Shannonの通信路符号化定理が主張する究極の誤り訂正符号を完全なかたちで代数的に構成するという大きな夢への扉をノックしたものです.以来,現在まで当初抱いた夢を追い続けています.

担当講義

研究テーマ

研究動機

 学位論文指導教員,平澤茂一先生との出会いです.私が学部3生のとき,平澤先生が,三菱電機株式会社から早稲田大学理工学部工業経営学科教授として着任されました.そのとき2年生の必修科目のFORTRAN演習を落としており,再履修で平澤先生が新しく担当されたFORTRAN演習を受講しなければいけませんでした.そのFORTRANの授業はまったく面白くなかったのですが,卒論ゼミを決めなければならないとき,当時の工業経営学科のカリキュラム,教員の専門分野にはまったく興味がありませんでした.平澤先生の専門分野を理解したわけではなかったのですが,数学科のご出身ということだけが印象にあり,平澤先生の研究室を迷わず選択しました.研究室に入って,符号理論・情報理論を知り,修士課程に進学して平澤先生の研究の成果である論文を読むようになって,Shannonの通信路符号化定理に関わる様々な問題を知るようになって,現在に至っています.

Shannonの通信路符号化定理の証明に関わる未解決問題

「夢は大きく」

 Shannonの通信路符号化定理の証明に関わる未解決問題を符号理論的立場及び情報理論的立場の両側面からアプローチし,両立場の関係を明らかにしつつ,最終的にはそれらの未解決問題の解決を目的(夢)としています.

 Shannonの通信路符号化定理は,

 「通信路容量C を超えない正の値の情報伝送速度 R で符号長 N とするとき,復号誤り確率 P (ε)が P (ε)<exp(-NE(R))で与えられる代数的符号化が可能である.ここで,E(R)>0が信頼度関数である.」

 です.これは,符号長 N を大とすることにより復号誤り確率 P (ε)が指数的に0に収束可能な符号化が存在するという極めて重要な結論を与えています.

 その結果,この結論を具体的に満足する誤り訂正符号の構成方法を研究するための符号理論が情報理論とは独立に体系づけられてきました.符号理論において,誤り訂正符号の信頼性の理論的評価は,漸近的距離比δ(R)により行われます.漸近的距離比δ(R)は,誤り訂正符号の符号長 N を大とするとともに訂正可能な誤りの個数を符号長 N との比で表したものです.

 Shannonの通信路符号化定理は,A. Feinstein,R. M. Fano,R. G. Gallager,A. J. Viterbi,有本卓,I. Csiszar,J. Korner,R. E. Blahutと韓太舜らにより現代化・精密化・定量化・一般化されてきました.特に,1970年後半からI. Csiszar,J. KornerとR. E. Blahut等により“タイプの概念”を用いて,通信路の特性に依存しない符号化・復号化によるユニバーサル通信路符号化定理が導出されました.これは通信路符号化に対する新しい視点や解釈が与えられ,定理の一般化がなされました.また,韓太舜は“情報スペクトルの概念”を用いて,非定常でも非エルゴード的でもよく,入出力アルファベットも可算無限個が許される通信路に対して,自然な一般化を行い,情報理論の再構築を試みています.一方,符号理論の立場から,復号誤り確率P (ε)の下界は漸近的距離比δ(R)の上界が与え,復号誤り確率P (ε)の上界は漸近的距離比δ(R)の下界が与えるから,2元対称通信路においては漸近的距離比δ(R)を正確に求めることが信頼度関数E(R)を正確に求めることに対応します.現在のところ,その漸近的距離比δ(R)の最も強い上界は, R. J. McEliese, E. R. Rodimich, H. Rumsey, Jr. と L. R. Welchによって与えられており,下界はVarshamov-Gilbertの下界式が最も強い限界式です.両者の間にはまだ隔たりがあります.さらに,J. Justesen は,連接符号化によってVarshamov-Gilbertの下界式には到底及ばないまでも,漸近的距離比δ(R)が正となる漸近的に能率の良い符号をはじめて陽に与え,Shannonの通信路符号化定理を非ランダムな構成的符号化による証明を試みました.その後,主として杉山康夫等によって,Justesen符号の大幅な改良がなされています.私の当初の研究成果は,このJustesen符号の改良にわずかではありますが寄与しました.さらに,符号理論の中には,任意に与えられた2元線形符号の重み分布を解析的に与える問題と非2元線形符号,すなわちReed-Solomon符号等,のガロア体のシンボル単位での重み分布(完全重み分布)を陽に求める問題が未解決問題として残されています.前者の問題は,嵩忠雄によるBCH符号やReed-Muller符号の研究成果が大半を占めており,後者の問題にいたっては,I. F. Blakeと常盤欣一朗のReed-Solomon符号の情報記号数の極めて小さな値での研究成果があるのみです.任意の符号の重み分布を陽に与えることは,その与えられた符号の復号誤り確率P (ε)や漸近的距離比δ(R)を正確に与えることを意味しています.しかし依然として,古典的ではあるますが,通信路符号化定理の証明で重要な役割をもつ信頼度関数E(R)および漸近的距離比δ(R)について,下記の未解決問題が存在します.

  1. 信頼度関数E(R)は,低情報伝送速度Rでは信頼度関数E(R)の上界と下界との間に差があり真に強い限界式は求まっていません.これは,「漸近的距離比δ(R)がVarshamov-Gilbertの下界式を等式で満足するならば,削除誤り指数Eex(R)が真の信頼度関数E(R)を与える」というShannon等による仮説に対応しています.
  2. ランダム符号化により証明された通信路符号化定理を非ランダムな構成的符号化により証明することです.
  3. 任意に与えられた2元線形符号の重み分布と任意に与えられた非2元線形符号の完全重み分布を解析的に求めることです.

 これらの問題を主たる研究テーマとしています.

経歴

現 職

  • 法政大学情報科学部教授

学歴・学位

  • 1983年 早稲田大学理工学部工業経営学科卒業(工学士)
  • 1985年 早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専攻 修士課程修了(工学修士)
  • 1991年 同              博士課程単位取得満期退学
  • 1991年 工学博士(早稲田大学)

職 歴

  • 1985年 - 1988年 三菱電機株式会社情報電子研究所
  • 1988年 - 1993年 神奈川工科大学工学部情報工学科助手
  • 1992年 - 1994年 東京都立科学技術大学非常勤講師
  • 1993年 - 1994年 法政大学工学部専任講師
  • 1994年 - 2000年 法政大学工学部助教授
  • 2000年 - 2001年 法政大学情報科学部助教授
  • 2001年 - 2003年 電気通信大学電気通信学部非常勤講師
  • 2001年 -     法政大学情報科学部教授、現在に至る

海外における職歴

  • 1998年 - 1999年 イリノイ大学アーバナ・シャンペン校(アメリカ合衆国)在外研究員

所属学会

  • 電子情報通信学会
  • 情報理論とその応用学会
  • IEEE Information Theory

主な出版物

  • 平澤茂一・西島利尚共著「符号理論入門」培風館

雑誌「法政」

研究業績