情報科学研究科概要
情報科学研究科長
花泉 弘 教授
情報科学・技術は、これまでの科学・技術に見られないような速さで変化しています。コンピュータの処理速度や記憶容量は1年半で2倍になります。も のを移動させるために、馬、自動車、飛行機、衛星ロケットと進化してきましたが、処理速度のアップはコンピュータのそれと比べるとわずかなものです。とこ ろで、このような急激な変化は何をもたらすでしょうか。私は20年毎の革命と思っています。20年たつと処理速度や記憶容量は1万倍速くなり、多くなりま す。この変化がコンピュータの世界を人々の生活を変えるほどに大きな変化をもたらします。過去の例を見ても分かるように、1960年代には企業での事務処 理が大型コンピュータで行われるようになりました。1980年代にはパーソナルコンピュータが出現し、個人でもコンピュータが使えるようになりました。また、2000年代にはインターネットが広まり世界中の人がコンピュータを介して接続されるようになりました。
それでは、次の20年は何をもたらすでしょうか。大学院に在籍中にこれに対する解を捜し求めて欲しいと思います。激しく変化する中に置かれているとき は、その変化の先に何が来るのかを的確に予想できないと生き抜いていくことはできません。この作業は大変なことだとは思いますが、是非、それぞれの解を見 つけてください。
私は次のように考えています。次の20年には量から質の変化に変わるのではないかと思っています。人間に限らず動物の脳は、並列・分散で処理されていま す。インターネットは並列・分散処理を加速しますが、プロセッサの変化がもっと本質的な変化をもたらすことと思います。これまで、プロセッサは一つのタスクしかすることができませんでした。しかし、Dual Coreと呼ばれるプロセッサには二つの実行コアが含まれています。更に、Quad Coreと呼ばれるプロセッサも出現し始めましたが、これには4つの実行コアが含まれています。今後、一つのプロセッサに含まれる実行コアは増えていくことと思われます。一つのプロセッサに千あるいは万の実行コアが含まれるようになったらどうなるでしょうか。これまでの情報科学・技術での処理方法が根底か ら変わってしまいます。これに備えて、新しい情報科学・技術を築いていくことが大切であると考えています。
最後に、日本は低学歴国と揶揄されています。技術者同士で名刺を交換すると、欧米の技術者は殆どが~PhD の肩書きがついていますが、日本の技術者はそう はなっていません。肩書きがその人の能力を測る全てでないことは言うまでもないことですが、情報科学・技術の分野は国際化が最も進んでいて、多くの皆さん は、海外の技術者のとの競争の中にさらされますので、在学中も修了後も常にステップアップを考えてください。
理念・目的・教育目標
情報科学研究は、学際領域として、自然科学はいうに及ばず、従来の人文社会系、生命科学系の発展、新たな学問分野の創出に深く関わるものとして期待されている。多くの情報系の研究科が2000年代に新設されたが、コンピュータ科学、情報科学の領域で我が国においては博士号取得者の数の大幅増は依然達成されていない。情報科学分野の教育研究者の不足は、2010年代においても依然として続くことが予想される。また、近年の急速な社会の情報技術化は産業構造基盤を根底から変革しつつある。実社会が直面する諸問題を実践的に解決し、新たな産業を創出し、将来の産業発展・維持するための人材も2010年代においては不足が続くことが予想される。本専攻は、このような我が国の現状を打開しコンピュータ情報システムと、その応用であるネットワークを核とするサイバーシステムを、系統的な学術分野として発展させ、情報科学分野の研究基盤を確立し、研究者、教育者、高度技術者を養成することを目指している。
教育内容・方法
本専攻は以上のような背景を受けて、コンピュータアーキテクチャ及びソフトウエアシステムを中核とするコンピュータ科学と、仮想現実及びサイバーワールドの、コンピュータの要素から応用に至る領域を連携した最先端の教育研究を行う。本専攻では、世界トップレベルの研究実績をもつ教員を配して、高度技術者また研究者を、国際的視野とレベルに立って養成する。学生には多くの国際会議での発表経験を積ませる。競争的研究資金を中心とする外部資金の導入を積極的に進め、学生の海外渡航のための援助を強化する。
基本方針
ディプロマ
「ものつくりから概念つくり」を目標にして情報科学部・情報科学研究科は設立された。情報社会が本格化した21世紀において、サイバーワールドの進展やインターネットの社会への浸透に見られるように、この目標は科学・技術をリードしていく上で極めて重要な概念となってきている。情報科学研究科においては、このようなミッションを担える研究者・高度専門技術者を育成することを目的として、博士前期(修士)課程、博士後期課程を設けている。博士前期課程は、講義科目と修士論文で教授され、修士論文は前記ミッションを実現するために、独創性・創造性を要求する研究タイプと、高度な情報科学の技術を駆使してプロジェクトを遂行できる開発タイプの2系列での審査を行っている。また、博士後期課程では、情報科学で主要と考えられる4領域のいずれかでの研究を中心に、透明化された学位審査を通して学位を授与している。
カリキュラム
情報科学・技術の進歩は激しく、知識の体系も大きな変化の流れの中にある。情報科学での国際・国内学会では、数年ごとに、情報科学分野で授与すべき知識の体系について見直しが行われている。情報科学研究科のカリキュラムもこれに合わせて、研究科のミッションにかなった教育課程の編成・実施を目標に、時代の要請にかなった知識体系を授けることを目的にしている。このため、今日、情報科学の主要な領域と考えられる並列コンピューティングとアーキテクチャソフトウェアシステム科学仮想現実とマルチメディアサイバーワールドインテリジェント・コンピューティングについて、情報科学・技術の領域での研究者及び高度な専門技術者を育成するための教育課程を実施している。さらに、この研究科で学んだ卒業生がグローバルに活躍できることを目的として、講義の一部は英語で実施される。また、留学生が履修している場合にはやはり英語で実施される。研究指導においても同様の処置がとられる。
アドミッション
情報科学・技術はグローバリゼーションの影響を最も大きく受けており、情報科学の研究者・技術者は、国内外の激しい競争にさらされている。諸外国と比べて、日本での修士・博士学位取得者が少ないとの指摘もあり、情報科学・技術分野での競争力を高めることを目的に、情報科学研究科では海外からの留学生も含めて、入学者を広く求めている。この目的を達成するために、情報科学研究科は、情報の科学と技術をもっぱら教授することを特徴とし、学内推薦、一般、社会人特別、外国人留学生特別の入試を行なっている。そして、「ものつくりから概念つくり」という情報科学研究科のミッションを実現してくれる入学者が多数門戸をたたいてくれることを希望している。なお、情報科学・技術を学部時代に専門としていない入学者に対しては、情報科学・技術分野の主要な学部科目を履修できるようにしている。
学位
- 修士課程: 修士 (理学)
- 博士課程: 博士 (理学)
TA と RA システム
TA (Teaching Assistant)
修士・博士課程の大学院生を対象に募集しています。一定の報酬を支給しています。
RA (Research Assistant)
博士課程の大学院生を対象に募集しています。一定の報酬を支給しています。
2010年度以前入学の院生に対する処置
修士課程
従来通り。但し、1年次に配当されている科目と先修科目・専門科目は2010 年より休講とする。従って、実際に実施される科目は、研究セミナーI,II,III,IV のみとなる。なお、専門科目については、新カリキュラムの講義科目を当てることができる。ただし、名称が同一の科目を再度履修することはできない。
博士課程
従来通り。但し、学生が希望すれば、新カリキュラムの指導教員の特別研究、特別演習を受けることができる。


